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税務調査の流れと税理士の立ち会いに伴う税理士報酬とは?

初めて税務調査の連絡がきたときは、当日の流れや準備するものなどが分からず、不安を感じますよね。
また、間違った対応をしてしまわないか心配で、プロの力を借りるべく税理士に立ち会いを依頼する人もいるでしょう。

今回のコラムでは、税務調査の流れや税務調査における税理士報酬の相場、立ち会う税理士を選ぶコツなどを紹介します。
このコラムを読んで、税務調査の概要と税理士報酬の相場を理解し、適切な税理士に立ち会いを依頼できるようになりましょう!

このコラムに出てくるキーワードの解説

調査官 このコラムでは税務調査を担当する税務署の職員を指す
追徴課税 不足していた税金を追加で納める行為。ペナルティが加算されるケースもある

税務調査の概要

税務調査では、調査官が、経営者に話を聞きたいと申し出るケースがあります。
「税理士に対応を丸投げするから」と、事前知識がない状態で当日を迎えると、聞き取りで不要なことを言ってしまい、調査が不利になる可能性もあるのです。

今回の章では、税務調査の概要を以下の5項目にわけて解説します。

  • 実施時期
  • 調査の流れ
  • 必要書類
  • 調査範囲
  • 注意点

実施時期

あなたの会社にいつ税務調査が入るかは、決算月から推測できます。

  • 2~5月決算法人:7~12月の調査が多い
  • 6~1月決算法人:1~6月の調査が多い

上記の2例は、税務調査の時期を測る目安として広く知られているものです。
また、個人の確定申告明けである4~5月頃、国税局・税務署の人事異動後の7~11月頃が調査が多くなるとも言われており、特に日本は3月決算の企業が多いため、7~11月頃の調査が増える傾向にあります。

なお、税務署が明確な疑いをもって調査に乗り出した場合は、上記の目安に当てはまらない可能性が高いため、突然、税務調査が実施されるケースもあります。

調査の流れ

税務調査は、以下の6つの手順で進みます。
なお、顧問税理士をつけており税務代理権限証書を提出しているケースでは、最初から税理士へ連絡が入るのが一般的です。

  1. 税務署より事前通達を受ける
  2. 調査の日程を調整する
  3. 事前準備(必要書類の準備)
  4. 調査当日
  5. 指摘事項への回答
  6. 調査結果の連絡を受ける
(1)税務署より事前通達を受ける

税務調査には「任意調査」と「強制調査」の2種類があります。
一般に税務調査と呼ばれるものは「任意調査」を指しており、任意調査は調査を行うことが事前に通達されます。
まれに任意調査でも無予告で調査が実施されるケースもありますが、税理士が到着するまで調査の開始を待ってもらえるため、慌てずに税理士へ連絡を取りましょう。
なお「任意」と名前がついていますが、正当な理由なく調査の拒否はできません。

また強制調査は、任意調査と異なり事前通達はありません。
ただし、強く脱税行為が疑われる場合にのみ実施されるため、法に則って経営をしていれば強制調査にまで発展する可能性はほとんどないと考えてよいでしょう。

(2)調査の日程を調整する

税務署からの事前通達時に、調査の希望日程を伝えられますので、スケジュールを調整します。
あなたの仕事の都合はもちろん、税理士の都合も調整する必要があるため、事前通達を受けたその場で日程を決める必要はありません。
税務署の希望日程をメモしておき、あなたと税理士でスケジュールを調整のうえ、決定した日程を税務署へ回答しましょう。
なお、税務署の希望する日程で都合がつかないときは、日程変更の申し出も可能です。

(3)事前準備(必要書類の準備)

事前通達の際に、調査対象となる税目や期間、調査で確認したい帳簿などの情報を教えてもらえますので聞き逃しがないようにしましょう。
税務署から教えられた内容を税理士に伝え、調査の前に税理士とともに必要書類を準備したり、想定される質問の回答を用意したりします。

なお、書類の準備時点で申告漏れや不備が発覚した際には、税務調査の実施前に修正申告をしましょう。
延滞による追加の税金は徴収されますが、調査で指摘を受けたケースに比べるとペナルティが軽くなる可能性があります。

(4)調査当日

事前に打ち合わせした日程で、税務署が事業所や店舗を訪れます。
経営者や税理士へのヒアリング、帳簿確認などが行われ、必要に応じて追加資料の請求や質疑応答をされるため、できる限り協力しましょう。

一般に税務調査は1〜3日程度で完了しますが、調査の進行具合によっては、日程が延長されたり、税務署が資料を持ち帰って入念に調査されたりするケースもあります。

(5)指摘事項への回答

訪問での調査完了後、さらに質問事項があったり、調査当日にその場で用意できない資料があったりした際には、後日、質問への回答や追加資料の提示を求められます。

(6)調査結果の連絡を受ける

調査の完了後、1週間〜3ヶ月程度で調査結果の連絡があります。
調査結果の連絡までの期間は、調査内容や会社の規模によりますので、すぐに返答がなくともあまり気に病む必要はありません。

調査の結果、特に問題がなければ「申告是認通知書」が届きます。
また、申告内容に不備があった際には、税務署からの指摘事項を元に「修正申告」を作成して追加の納税をしますが、修正に応じなければ税務署から「更生」処分を受けます。
なお「修正申告」と「更生」では納税する金額は変わりませんが、更生処分の場合は、税務署の決定に納得できなければ不服申し立てが可能です。

必要書類

税務調査では、さまざまな帳簿書類を確認されます。
今回の章では、税務調査でよく確認される書類を記載しますが、以下に記載がない書類の提示を求められる可能性もあるため、常日頃から書類を整理しておくのが大切です。
また、一般的には調査の対象期間となるのは3~5年程度ですが、帳簿の保存期間は7年(青色申告の欠損金の繰越控除を受けるためには10年)のため、万が一、提出を求められてもすぐに取り出せるようきちんと保管しておきましょう。

  • 現金出納帳
  • 預金通帳
  • 売掛帳・買掛帳
  • 総勘定元帳
  • 見積書・請求書
  • 納品書・領収書
  • 棚卸表
  • 貸借対照表・損益計算書
  • 給与台帳
  • 契約書
  • 株主総会議事録

・・・など。

調査範囲

税務調査で調査される範囲は「事業に関わるもの全般」です。

前述したとおり、さまざまな帳簿書類を確認されるのはもちろん、必要に応じて事業用パソコンのデータを確認されるケースもあります。
また、個人所有のパソコンや通帳は基本的に確認されませんが、事業に関する作業や取引を個人のもので行っていた場合には、調査対象となる可能性があります。

なお調査官は、断りもなく書類やパソコンには触りません。
しかし、調査で提示を求められたら応じる必要があるため、個人のパソコンや通帳を見られたくない人は、日頃から事業用と個人用をしっかりと区別して使い分けておきましょう。

注意点

税務調査で注意するべき点は以下の4つです。

  • 税理士と打ち合わせしておく
  • 質問された内容のみに回答する
  • 嘘をつかない
  • 手元に残しておきたい書類はコピーしておく

税務調査で注意するべき点の1つ目は「税理士と打ち合わせしておく」です。
税務調査の実績が豊富な税理士は、税務署がどのような点を確認するのか経験則からわかっています。
税理士に調査当日に提示する書類を見てもらい、書類の不備や想定される質問を教えてもらうと、より隙のない調査対応ができるでしょう。
また、あらかじめ不安に感じる点について相談しておけば、法令に則った方法で、一緒に解決策を考えてくれるはずです。

2つ目の注意点は「質問された内容のみに回答する」です。
税務調査では、税務署に聞かれていない情報まで話す必要はありません。
ポロっと漏れた情報が税務署の直感に引っかかり、深く追及された結果、他の話との矛盾点が見つかると不要な疑いを招いてしまいます。
情報を秘匿してはいけませんが、くれぐれも「喋りすぎ」には注意してください。

3つ目の注意点は「嘘をつかない」です。
税務調査では、嘘をつかず、誠実な受け答えをしてください。
調査官に質問されるとすぐに答えなくてはと焦ってしまうかもしれませんが、調査のその場でわからなければ後日の回答でも構いません。
嘘が発覚すると、ペナルティが課されるほか、不正を隠そうとしたとして税務署に目をつけられる可能性があるため、絶対に嘘はつかないようにしましょう。
また、税務署が調査以前に不正の証拠を掴んでおり、不正の確信を持って調査に訪れているケースもあるため、嘘をつくとペナルティを重くするだけで利益はありません。

4つ目の注意点は「手元に残しておきたい書類はコピーしておく」です。
税務調査では、税務署が書類を持ち帰るケースがあります。
日々の業務で使用する書類を持ち帰られてしまうと、業務の進行がスムーズにいかなくなる可能性もあるので、よく使用する書類を預ける際には必要に応じてコピーを取っておきましょう。

また、税務署に書類を預ける際には「預かり証」を発行してもらうようにしましょう。
税務署にどの書類を預けたのか把握するほか、長期に渡り書類が返還されないときには、書類を預けている証拠となるため、預かり証は必ず受け取ってください。

税務調査で税理士に立ち会いを依頼するメリット

税務調査で税理士に立ち会いを依頼するメリットは以下のとおり3つあります。

  • 事前に相談ができる
  • 税務署の対応を行ってくれる
  • 修正申告を作成してくれる

税務調査で税理士に立ち会いを依頼するメリット1つ目は「事前に相談ができる」です。
税務調査の注意点でも紹介しましたが、税務調査の実績が豊富な税理士は、税務署がどこを調査するのか経験則でわかっています。
想定される質問・回答や注意するべき点へのアドバイスなどを事前に教えてもらえるため、さまざまな不安要素を解決してから調査に臨むことが可能です。

2つ目のメリットは「税務署の対応を行ってくれる」です。
税理士に税務調査の立ち会いを依頼すると、調査当日の税務署の対応は全面的に税理士が行ってくれます。
1人で税務署の対応をすると、慣れない調査に緊張してパニックになってしまう可能性もあるでしょう。
しかし税理士は、税務署からの指摘事項に対し、税法や数字の根拠に基づいた反論・交渉をしてくれるため、あなたの心強い味方になってくれます。
また理路整然とした回答ができれば、調査の長期化や不当な追徴課税を回避できます。

3つ目のメリットは「修正申告を作成してくれる」です。
税務調査の結果、申告に誤りが発覚した際には修正申告をしなくてはなりません。
税務調査に税理士が立ち会っていれば、どの点について指摘を受け、どのような根拠に基づいて修正すればよいか、詳細を把握したうえで修正申告を作成してくれるでしょう。

税務調査における税理士報酬の相場

税務調査における税理士報酬の相場は、1日あたり3〜5万円です。
また、調査の事前準備や調査後の修正申告があると、調査の日当とは別に費用が発生する可能性もあります。

なお税理士と、月額あるいは年間で顧問契約をしている場合でも、調査対応料は顧問料と別に請求されるケースもあります。
報酬金額は調査に関する作業量によって変わるほか、報酬体系や業務範囲はそれぞれの税理士事務所によって異なるため、依頼をする前に見積もりを出してもらうと良いでしょう。

税務調査に立ち会う税理士を選ぶコツ

税務調査に立ち会う税理士を選ぶコツは2つあります。

立ち会いを依頼する税理士によって、税務調査の結果は大きく左右されます。
あなたが損をしないためにも、税務調査に立ち会ってもらう税理士は慎重に選びましょう。

  • 税務調査の経験が豊富
  • 税法に詳しい・交渉力がある

税務調査に立ち会う税理士を選ぶコツ1つ目は「税務調査の経験が豊富」です。
開業したばかり、入社したばかりの税理士は税務調査の経験がなく、調査について事前に相談しても具体的なアドバイスを得られない可能性があります。
また、税務調査の対応を行っていない税理士事務所もあるため「税理士と顧問契約を結んでいるから大丈夫」とは言い切れません。

新たに税理士を探す際には調査の実績がある事務所を選ぶ、担当者が新人の場合にはベテランの税理士にも立ち会ってもらうなどの方法で、税務調査への不安を減らしましょう。

2つ目のコツは「税法に詳しい・交渉力がある税理士を選ぶ」です。
税務調査では、申告は税法に則って計算されているのに、計算根拠についてはっきりと説明できなかったために、根拠不十分として追徴課税を請求されるケースがあります。
また、曖昧な回答を繰り返したために調査が長引いたり、高圧的な態度の調査官に急かされて回答を熟考する間もなく答えてしまうケースもあります。

上記のような状況を回避するためには、税法・数字に則った反論を、理路整然と答えられる税理士に調査に立ち会ってもらうと良いでしょう。

まとめ

今回のコラムでは、税務調査の流れや税務調査における税理士報酬の相場、立ち会う税理士を選ぶコツなどを解説しました。
これまでの内容をまとめると以下のとおりです。

  • 税務調査は6つの手順で進められる
  • 税務調査では事業に関するもの全般を調べられる
  • 税務調査で税理士に立ち会いを依頼するメリットは4つ
  • 税務調査における税理士報酬の相場は日当3~5万円
  • 税務調査に立ち会う税理士を選ぶコツは2つ

税務調査は不正をしていなければ恐れるものではありませんが、いざ連絡がくると身構えてしまうものです。
しかし税務のプロである税理士を頼ると、税務署の対応をする心理的・時間的負担や追徴課税による金銭的な負担を減らすことができます。

このコラムを読んで、税務調査に対応可能な税理士を探そうと考えた方は、まずはあなたの税理士が税務調査に対応してくれるか聞いてみましょう。

たとえば税務担当者が複数在籍している税理士事務所では、税務調査になると調査対応に精通したベテラン担当者が同席してくれるケースがあります。
また、新たな税理士に調査対応のみを依頼することも可能ですが、あなたの会社の情報を1から把握しなければならないため、かえってあなたの手間を増やしてしまう可能性もあります。

まずは、あなたの税理士に税務調査に対応しているか、報酬体系はどのようになっているかなどを尋ねてみましょう!