株投資に関わる税金とは?
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事業が安定してくると、事業以外の活動で資産を増やすために「株投資」を検討する人もいるでしょう。
株の投資によって資産が増えるのは喜ばしいですが、利益が出れば「税金」がかかるのを忘れてはいけません。
今回のコラムでは個人の株投資の観点から、株投資に関わる税金の種類や計算方法、確定申告不要な株投資のケースなどを解説します。
このコラムを読んで、かしこく株の投資を行えるようになりましょう!
目次
このコラムに出てくるキーワードの解説
株の投資 | 将来性や安定性のある企業の株式を購入して、配当金や株式売買による利益獲得を目指す行為 |
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株主 | 株の投資をした人のこと。出資者とも呼ばれる |
譲渡益 | 株が購入価格より高値で売却できた際に発生する利益です。 |
配当金 | 投資先の企業が、獲得した利益を株主に分配したものです。配当金の有無は各企業によって異なり、株主は保有する株数によって受け取れる配当金額が変わります。 |
株の投資にかかる税金とは?
株の投資にかかる税金は「所得税」「住民税」「復興特別所得税(2037年まで)」の3種類です。
上記の各種税金は、株の投資の利益に課税されますが、株の投資における利益は2種類あり、どちらの利益にかかるかによって税金の計算方法が異なります。
- 譲渡益
- 配当金
株の投資における利益の2つ目は「配当金」です。
配当金は、投資先の企業が、獲得した利益を株主に分配したものです。
配当金の有無は各企業によって異なり、株主は保有する株数によって受け取れる配当金額が変わります。
配当金の所得税の計算方法は、対象となる所得を合算して所得税率を決める「総合課税」と前述の「申告分離課税」のどちらかを選択できます。
総合課税を適用すると、所得金額によって所得税率が変わる(5%〜45%)ほか、投資先企業と株主で二重課税された部分を株主に還元する「配当控除」が使用できます。
つまり配当金の申告では、各種税率の合計が申告分離課税(20.315%)を下回る場合、総合課税の方が税額を安く抑えられるのです。
株の投資で確定申告不要な3つのケース
株の投資で懸念事項の1つとなるのが「確定申告」。
確定申告は難しい、株の投資では確定申告が必要というイメージから、株の投資に踏み切れない人もいるのではないでしょうか。
今回の章では、株の投資で確定申告が不要になる3つのケースを紹介します。
- 損失が出たとき
- 利益が20万円(48万円)以下のとき
- 特定口座(源泉徴収あり)を利用している
損失が出たとき
株の投資で確定申告が不要なケース1つ目は「損失が出たとき」です。
確定申告で計算する所得税とは、簡単な言葉にすると「利益にかかる税金」です。
そのため、株の投資で損失が出た状態、つまり利益がマイナスの際は確定申告を行う必要はありません。
利益が20万円(48万円)以下のとき
2つ目のケースは「利益が20万円(48万円)以下のとき」です。
給与所得が2,000万円以下で、給与所得以外の所得が20万円以下であれば確定申告の必要はありません。
上記の条件は株の投資も例外ではなく、給与所得が2,000万円以下かつ株の投資の利益が20万円以下であれば確定申告は不要です。
また、株の投資の他に所得がない場合は、株の投資の利益が48万円以下であれば利益が基礎控除と相殺され所得が0円となるため、確定申告は必要ありません。
参照:国税庁,№1900 給与所得者で確定申告が必要な人
参照:国税庁,№1199 基礎控除
特定口座(源泉徴収あり)を利用している
3つ目のケースは「特定口座(源泉徴収あり)を利用している」です。
株の投資の口座には、一般口座と特定口座があります。
特定口座には、源泉徴収あり・源泉徴収なしの2種類があり、「源泉徴収あり」を利用している場合、証券会社が所得税や住民税を源泉徴収してくれるため確定申告は不要です。
なお源泉徴収なしの特定口座でも、株の投資の譲渡損益を計算した「年間取引報告書」を証券会社が作成してくれるため、一般口座を利用するより確定申告を簡単に行えます。
株の投資における4つの節税対策
前章では株の投資を行っても確定申告が不要になるケースを紹介しました。
しかし、株の投資では、確定申告をしないとかえって損してしまうケースもあるのです。
今回の章では、株の投資で活用できる4つの節税対策を紹介します。
- 確定申告で総合課税を選択する
- 確定申告で利益と損失を相殺する(損益通算)
- 確定申告で損失を繰り越す(繰越控除)
- 特定口座(源泉徴収あり)を利用していても確定申告する
確定申告で総合課税を選択する
株の投資で活用できる節税対策1つ目は「確定申告で総合課税を選択する」です。
「株の投資にかかる税金とは?」の章でも紹介しましたが、配当金の所得税を計算する際は、総合課税を選択すると申告分離課税よりも税金を安く抑えられる可能性があります。
申告分離課税では所得税・住民税・復興特別所得税の合計率は20.315%と決まっていますが、総合課税では所得金額により所得税率が5%〜45%のいずれかに決まります。
つまり各種税率の合計が20.315%を下回れば、申告分離課税より総合課税が有利となるのです。
なお具体的にそれぞれの税率を考慮すると、おおむね所得が695万円以下までは総合課税が有利だと言えます。
参照:大和証券,税率早見表
また、総合課税では配当控除が使用できるため、投資先企業と株主で税金が二重に徴収されるのを防ぐこともできるのです。
確定申告で利益と損失を相殺する(損益通算)
2つ目の節税対策は「確定申告で利益と損失を相殺する」です。
株の投資で損失が出た際には、確定申告を行う必要はありません。
しかし、確定申告で申告分離課税を選択すると、同年の他の株式譲渡益や配当金と損失分を相殺できるようになります。
株の投資に関して複数口座を開設しており、損失が出た口座の他に利益が出ている口座がある場合には、確定申告を行うと節税できる可能性があるのです。
確定申告で損失を繰り越す(繰越控除)
3つ目の節税対策は「確定申告で損失を繰り越す」です。
上場株式の投資では、確定申告をした年で相殺しきれなかった損失について、最大3年間まで繰り越しできる制度が設けられています。
つまり、株の投資で利益が出ても繰り越した損失が残っていれば、利益と損失を相殺して税金を安く抑えられるのです。
なお、繰り越しをするためには取引のない年も確定申告が必要な点、一般株式では損失の繰り越しができない点に注意してください。
特定口座(源泉徴収あり)を利用していても確定申告する
最後に4つ目の節税対策は「特定口座(源泉徴収あり)を利用していても確定申告する」です。
特定口座(源泉徴収あり)を利用しているケースでは、確定申告は必要ありません。
しかし所得が0円となるような人の場合、そもそも所得税はかからないため「特定口座(源泉徴収あり)」を利用していると、払う必要のない所得税を徴収されてしまうのです。
具体的には、株の投資の他に所得がなく、株の投資の利益が48万円以下であれば基礎控除と相殺されて所得が0円となるため、確定申告をしなければ損してしまいます。
まとめ
今回のコラムでは、個人の株投資の観点から、株投資に関わる税金の種類や計算方法、確定申告不要な株投資のケースなどを解説しました。
これまでの内容をまとめると以下のとおりです。
- 株の投資にかかる税金は3種類
- 上記の税金は利益の種類によって計算方法が異なる
- 株の投資で確定申告が不要なケースは3つ
- 株の投資で活用できる節税対策は4つ
株の投資は、資産を増やすのに有効な手段です。
給与以外にも収入源があれば、個人の資産に対する心配を軽減でき、より強く事業に打ち込めるでしょう。
今回のコラムを読んで、株の投資を始めてみようかと考えた方は、まずは税理士に相談してみてください!
あなたの所得金額によって節税に有利な口座が変わったり、税金の計算方法が複雑であったり、確定申告の影響で社会保険料が増加する可能性もあるため、投資を始める前に専門家に相談するのをおすすめします。
まずは所得金額のわかる資料を持って、あなたの税理士に株の投資について意見を聞いてみましょう!