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株投資で有利なのは個人?法人?メリット・デメリットを解説

法人の経営が順調で余剰資金ができたり、役員報酬で個人の懐が暖まってきたりすると、株投資でさらなる資産の増加を目指す人もいるでしょう。
しかし個人と法人の株投資では、税率・申告方法・経費計上の要件などが異なるため、それぞれのメリットとデメリットを理解していないと損してしまう可能性があるのです。

今回のコラムでは、個人口座と法人口座、それぞれで株投資する際のメリット・デメリットを解説します。

このコラムを読んで、あなたに適した株投資の方法を見つけられるようになりましょう!

このコラムに出てくるキーワードの解説

株の投資 将来性や安定性のある企業の株式を購入して、配当金や株式売買による利益獲得を目指す行為

個人口座で株投資するメリット

今回の章では、個人口座で株投資するメリットを3つ紹介します。

  • 口座開設・確定申告が簡単
  • 税率が低い
  • 評価と納税のタイミングが同じ

口座開設・確定申告が簡単

法人の預金口座は、資本金が100万円以上ないと口座開設が難しいケースがあります。
しかし、個人で口座を開設する際には資金額による制限はありません。

また「特定口座(源泉徴収あり)」の口座を利用する場合、所得税や住民税を証券会社が徴収してくれるため確定申告は不要です。
なお「特定口座(源泉徴収なし)」の口座を利用する場合は確定申告は必要ですが、証券会社が年間取引報告書を作成してくれるため、株の投資に関する集計作業が必要ありません。

一方で、法人では「特定口座」の開設ができないため、確定申告が必要なのはもちろん、株の投資に関する集計作業はすべて自力で行う必要があります。

税率が低い

個人の株の投資の確定申告では「総合課税(税率5%〜45%)」と「申告分離課税(税率20.315%)」のどちらで申告するか選べます。
所得金額によってどちらの申告方法が有利かは変わりますが、正しく有利な申告方法を選べれば所得税率が20.315%を上回ることはありません。
詳しくは『株投資に関わる税金とは?』をご覧ください。

しかし法人の税率は30%超(所得金額や事業所のある自治体によって変動する)となるケースがほとんどのため、単純に株の投資の税率だけを比較すると、法人よりも個人のほうが税率が低いと言えます。

評価と納税のタイミングが同じ

個人で株を売買するケースでは、売買時に株の評価をするため、売却資金の入手と納税が同じ会計期間で行われます。

一方で、法人で投資目的の株を保有しているケースでは、株は「売買目的有価証券」に分類され、毎会計期間ごとに評価をしなくてはなりません。
評価上の利益に対しても税金が課されるため、数年にわたって株を保有していた場合は、株を売却しておらず手元に資金が入ってきていない状態でも、納税が発生する可能性があるのです。

個人口座で株投資するデメリット

個人口座で株投資するデメリットは「相続対策として活用しにくい」です。

相続税や贈与税は累進課税方式が採用されているため、相続や贈与の金額が大きくなるほど税率も高くなります。
相続時に資産をまとめて譲り受けると、多額の相続税を1度に納めなければならず、納税者の金銭的・精神的負担は計り知れません。
そのため生前に分割の贈与を検討する人もいますが、贈与は非課税枠が年間110万円までで、贈与額によっては最大55%の税率が課せられるため、まとまった金額の贈与も難しいのが実態です。

しかし、役員報酬の形で少しずつ資産を譲っていけば、相続時に多額の納税をする負担を軽減できます。

株の投資で得た資産を役員報酬の形で家族に譲ると、資産を分割で贈与するのと同じように相続税の納税者への負担を軽減できるうえ、経費計上により利益の圧縮もできます。
個人事業主でも家族への給与は支払えますが、原則として給与は経費にならず、経費計上するためには複数の要件をクリアする必要があります。
一方で、法人の役員報酬は、報酬金額を柔軟に変更できない点は少々不便ですが、経費計上のために特別な要件を満たす必要はありません。

つまり相続対策としては、法人の役員報酬ひいては法人口座の株の投資のほうが活用しやすいと言えるでしょう。

法人口座で株投資するメリット

今回の章では、法人口座で株投資するメリットを3つ紹介します。

  • 損益通算ができる
  • 欠損金の繰越期間が長い
  • 経費計上できるものが多い

損益通算ができる

法人は所得区分が設けられていないため、株投資と本業の損益を相殺できます。(損益通算)
たとえば、本業で発生した損失よりも株の投資の利益が小さかった場合、最終的な所得はマイナスになり均等割り以外の税金はかかりません。

一方で、個人の所得は細かく区分が決まっているため、株投資と、株投資以外の所得の損益の相殺はできません。
たとえば、個人で営んでいる事業で発生した損失よりも株の投資の利益が小さかった場合は、損益通算ができないため納税が必要なのです。

欠損金の繰越期間が長い

法人の欠損金の繰越期間は10年、個人の繰越期間は3年です。

確定申告で欠損金(赤字)がでた場合は、翌年以降に損失を繰り越せるため、翌年以降に利益がでても繰り越した損失分と利益を相殺して税金を安く抑えられます。
なお繰越期間を満了した損失は消滅してしまうため、株の投資や事業で損失がでた場合には、より長く繰越期間のある法人のほうが節税のメリットが大きくなります。
また繰り越した欠損金も通常の損失と同じように、法人は所得区分に関係なく損益通算ができますが、個人では株式関連の所得内での限定的な損益通算しかできません。

経費計上できるものが多い

法人では株の投資にかかる費用も、事業にかかる費用と同じく経費計上ができます。
具体的には、パソコンや筆記具、株の投資に関する書籍、株の投資関連の書類をまとめるファイルなどの計上です。
また法人は所得区分が設けられていないため、株の投資にかかった費用がほとんどなくとも、事業にかかった費用の計上で利益の圧縮ができます。

一方で、個人の株の投資の経費計上は、株式の取得費用と手数料しか認められていないため、利益圧縮の観点では法人のほうが有利だと言えるでしょう。

法人口座で株投資するデメリット

法人口座で株投資するデメリットは「個人資産を増やしたいケースでは、余計な支出がかかる」です。

法人口座で株の投資をして得た利益は、役員報酬で受け取る形で個人資産にするのが一般的でしょう。
役員報酬を増額すると、所得税・社会保険料・住民税が高くなるため、増額した報酬金額がまるまる手元に残るわけではありません。
また原則として役員報酬の金額は決算時にしか変更できないため、株の売買時期と決算時期が離れていたケースでは、報酬の増額まで時間がかかるデメリットもあります。

まとめ

今回のコラムでは、個人口座と法人口座、それぞれで株投資する際のメリット・デメリットを解説しました。
これまでの内容をまとめると以下のとおりです。

個人 法人
口座開設 資金による制限なし 資金制限がある可能性あり
確定申告
  • 不要なケースあり
  • 自力での集計は必要なし
  • 必ず申告が必要
  • 自力での集計が必要
税率 20.315% 30%超のケースがほとんど
評価と納税のタイミング 売却資金の入手と納税のタイミングは同じ 売却資金の入手と納税のタイミングが異なるケースがある
損益通算 株投資とその他の所得は損益通算できない 所得区分がないため損益通算できる
相続対策 活用しにくい 活用しやすい
欠損金の繰越期間 最大3年 最大10年
経費計上
  • 株式取得費用
  • 手数料
パソコン・筆記具・書籍なども経費計上できる
個人資産の増加 余計な支出はかからない 余計な支出がかかる

上記の表を参照すると、税率の低い「個人口座」は株投資で利益がでた場合に、損益通算のできる「法人口座」は本業と株投資で損失がでた場合に有利だと言えます。
しかし、あなたの株投資の目的が「個人資産の増加」「資産を家族に残したい」のどちらなのかによっても選ぶ口座は変わるため、利益や損失の観点だけで有利な口座を断定するのは難しいでしょう。

そのため、このコラムを読んで株投資に挑戦してみようと考えた方は、株投資を始める前に税理士に相談することをおすすめします。

とくに資産を家族に残したいケースでは、将来的にかかる相続税額と役員報酬にかかる所得税・社会保険料・住民税の額を比較して、どちらの総額が多くなるかを検討しておかなければ大きく損してしまう可能性があります。
また損失を見越してハイリスク・ハイリターンの株投資は法人口座で、ローリスク・ローリターンの株投資は個人口座で行う方法もあるため、株投資のリスク分散について相談するのも良いでしょう。

まずは1度、株投資を始める前に、あなたの税理士に株投資についての意見を尋ねてみてください!