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個人事業主が法人化する年収(利益)基準はいくら?節税の観点から解説

個人事業主として事業が安定してくると視野に入るのが「法人化(法人成り)」。

知り合いの経営者から法人化した方が得だと聞いて「自分も法人化するべきなのだろうか……」と漠然と考えている方もいるのではないでしょうか。
たしかに法人化にはさまざまなメリットがありますが、法人化をすれば誰でも得するわけではありません。

今回のコラムでは、個人事業主が法人化する基準と法人化のメリット・デメリットを紹介します。
このコラムを読んで、個人事業主か法人か、どちらがあなたの理想の未来に近いのか見極めましょう!

このコラムに出てくるキーワードの解説

法人化(法人成り) 個人事業主が株式会社や合同会社などを設立して事業を継続すること

個人事業主が法人化する基準とは?

個人事業主の法人化は、それぞれの事業の状況によって最適なタイミングが異なります。
法人化するために設立費用が必要であったり、法人特有の税金があったりするため、適切なタイミングを見極めないとかえって利益が減ってしまう可能性もあるのです。

今回の章では、個人事業主が法人化する基準について3つの観点から解説します。

  • 年収
  • 利益
  • 節税

年収から考える法人化

まず1つ目の基準は「年収」です。

個人事業主が法人化する基準として「年収1,000万円」を目安にすると良いでしょう。
年収が1,000万円を超えると、1,000万円を超えた年の2年後から消費税の納税義務が発生します。
しかし法人化すると「法人化してから2年間」は消費税の納税義務が免除されます。
つまり、個人事業主のままでいるよりもプラス2年間、消費税の納税を遅らせられるのです。

なお、資本金が1,000万円以上ある場合は初年度から消費税の納税義務がある点と、インボイス発行のためには課税事業者にならなくていけない点に注意が必要です。

利益から考える法人化

次に2つ目の基準は「利益」です。

個人事業主が法人化する基準として「利益が800万円を超える」のも目安になります。
個人事業主の利益にかかる所得税は、利益が大きくなるほど税率も高くなり最大45%にまで上昇します。
一方で法人の税率は23.20%止まり(資本金1億円以下かつ利益が800万円超の法人の場合)です。
利益800万円で所得税率と法人税率が同程度になり、900万円になると所得税率が法人税率を上回ってしまうため、800万円超の利益が出た際には、法人の方が税金が安く抑えられる計算になります。

なお法人化するために費用がかかったり、給与や社会保険料の負担により、法人化したために利益が800万円を下回る可能性も考えられます。
利益が800万円を超えたからといってすぐに法人化するのではなく、法人化した後に必要な経費についても考慮したうえで、あなたの会社を法人にするか検討しましょう。

節税から考える法人化

最後に3つ目の基準は「節税」です。

法人は個人事業主と異なり、一定の手続きを経て給与や退職金を経費にできます。
また法人名義の保険も経費にできるほか、赤字を10年まで繰り越すことも可能です。
個人事業主でも青色申告を行っていれば3年間は赤字を繰り越せますが、法人になれば繰越期間が3倍以上に延びるのは大きなメリットと言えるでしょう。

つまり「年収」で紹介した消費税の納税義務期間を遅らせる方法、「利益」で紹介した所得税率と法人税率の違い、そして今回紹介した経費計上と赤字相殺の観点から、総合的に法人は個人事業主よりも節税効果が高いと言えるのです。

個人事業主が法人化するメリット・デメリット

個人事業主の法人化には、メリットだけでなくデメリットも存在します。
メリットだけに目を向けて法人化を焦ると、いざ法人化した後に「個人事業主のままで良かったかも!?」と後悔する可能性もあるのです。

今回の章では、個人事業主が法人化するメリット・デメリットを、前章で紹介した年収・利益・節税以外の観点から解説します。

メリット

個人事業主が法人化するメリットは主に3つあります。

  • 社会的な信用度が高くなる
  • 決算月を決められる
  • 責任範囲が限定される

1つ目のメリットは「社会的な信用度が高くなる」です。
法人化の際には登記を行わなくてはならず、登記後の情報は誰でも確認できます。
社名・代表者名・所在地・資本金などが公開されるため、情報の透明性が増し、不透明性の高かった個人事業主時代よりも信用度が高まるのです。

また個人事業主は不安定なイメージが根強いため、金融機関からの融資額が少額にとどまったり、法人相手の取引が成立しにくかったり、求人の選択肢に選ばれにくかったりと事業拡大を目指しても思うように進まないケースが多々あります。
融資・販路拡大・人材確保などの面から考えても、法人の社会的信用度は個人事業主にはない魅力と言えるでしょう。

2つ目のメリットは「決算月を決められる」です。
個人事業主の確定申告は毎年2月16日から3月15日と決まっていますが、法人は決算月を任意で決められます。
閑散期に決算月を設定して、時間や気持ちに余裕をもって決算業務を行うことも可能です。

3つ目のメリットは「責任範囲が限定される」です。
個人事業主は良くも悪くも事業に関する責任をすべて自分自身で負わなくてはなりません。
しかし、法人化すれば経営者は出資した分以上の責任を負う必要はなく、たとえ会社が倒産しても個人の資産は守られます。(連帯保証人となっているケースを除く)

デメリット

個人事業主が法人化するデメリットは主に5つあります。

  • 設立費用がかかる
  • 株主総会や取締役会の開催が必要
  • 経理・税務のコストがかかる
  • 社会保険料の加入義務がある
  • 赤字であっても税金がかかる

まず1つ目のデメリットは「設立費用がかかる」です。
設立時の1度きりではありますが、法人を設立する際には必ず支払わなくてはならない費用があり、おおよそ20~30万円の支出が予想されます。

2つ目のデメリットは「株主総会や取締役会の開催が必要」です。
法人化すると重要な意思決定は、株主総会や取締役会で決議しなくてはなりません。
また、申告書提出時や税務調査時に議事録の提出を求められる可能性がありますので、仮に株主があなた1人だとしても議事録の作成が必要です。

3つ目のデメリットは「経理・税務のコストがかかる」です。
一般的に個人事業主よりも法人の方が経理・税務の業務は複雑になっており、専用の人材を雇ったり、専門家に依頼したりすると費用がかさんでしまいます。
費用削減のために、経理・税務業務まですべて自分で行うことも可能ですが、その時間は事業を行えないため、あなたの時間的コストがかかってしまうのです。

4つ目のデメリットは「社会保険料の加入義務がある」です。
法人の経営者は社会保険料の加入義務がありますが、報酬額によっては個人事業主時代よりも健康保険料や厚生年金の支払額が増す可能性があります。

5つ目のデメリットは「赤字であっても税金がかかる」です。
法人は個人事業主と異なり、赤字でも「均等割」という法人住民税がかかります。
この税金は利益額や法人の稼働状況に関わらず必ず支払わなくてはならない税金なので、たとえ大赤字でも免除されることはありません。

まとめ

今回のコラムでは、個人事業主が法人化する基準と法人化のメリット・デメリットを解説しました。
これまでの内容をまとめると以下のとおりです。

  • 法人化する基準①:年収1,000万円超
  • 法人化する基準②:利益800万円超
  • 法人化する基準③:節税効果
  • 法人化するメリットは3つ
  • 法人化するデメリットは5つ

今回紹介した基準はあくまで目安であり、基準の金額を超えたからといって必ず法人化しなくてはならないわけではありません。
しかし、事業が拡大するほど法人化のメリットは大きくなりますので、あなたがこれから事業をもっと拡大していきたいと考えているのであれば、法人化を検討しても良いでしょう。

今回のコラムを読んで法人化に興味を持った方は、まずは税理士に相談をしてみてください!
税理士は、あなたの事業の成長を踏まえた具体的なアドバイスをしてくれるので、法人化へのビジョンがより明確になるでしょう。
また税理士事務所によっては法人化のサポートを行っているところもありますので、事前に相談しておけば、実際に法人化の手続きを行う際もスムーズに話が進みます。

まずは1度、あなたの税理士に法人化について意見を聞いてみましょう!