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税務調査での指摘に際して発生するペナルティや費用をご紹介

税務調査の連絡があったとき、あなたは調査に備えて過去の申告書を確認するでしょう。
その確認時に「曖昧な解釈のまま申告書を作ってしまったけど大丈夫?」「深く考えていなかったけど、この処理って正しい?」など、不安な点がみつかる可能性があります。

今回のコラムでは、税務調査時に指摘を受けた際のペナルティや関連費用、ペナルティを安く抑える方法、ペナルティを払えないときの対処法などを解説します。
このコラムを読んで、税務調査のペナルティについて正しく理解し、事前に対応可能な対策は調査前に済ませておけるようになりましょう!

このコラムに出てくるキーワードの解説

修正申告 提出済みの申告書の誤りを申告期限後に修正する行為
追徴課税 不足していた税金を追加で納める行為。ペナルティが加算されるケースもある

修正申告とは?

修正申告とは「提出済みの申告書の誤りを、申告期限後に修正する行為」です。
税務調査で指摘を受けて修正するケースのほか、調査に関係なく自主的にミスを修正する行為も修正申告と呼ばれます。

なお税務調査では、調査完了後の結果は以下の3つのいずれかに分かれます。

申告是認 申告書に誤りはなく、申告書の修正や追加の納税が不要な状態
修正申告 申告書に誤りがあったため、申告書の修正や追加の納税が必要な状態
更生 「修正申告」との結果が出たにも関わらず、申告書の修正を行わないと下される処分。追加の納税額は変わらないが、税務署に不服申し立てが可能

修正申告の提出は、税務署からの指摘で納税者が誤りを認めたという意味を持つため、修正申告を提出した後に「税務署の決定に不服があります!」との申し出はできません。
税務署の決定に不服がある際には、指示されたからと安易に修正申告をせず、不服申し立てをしましょう。
ただし不服申し立ての審査中も、延滞税(次々章で紹介します)が発生したり、納税をしないと督促状が届いたりするので、修正申告の提出や納税のタイミングについては税理士と相談すると良いでしょう。

修正申告の税理士報酬の相場は?

修正申告の税理士報酬の相場は、5〜20万円程度です。

税務調査の結果、修正申告の必要ありと判断された際には、調査に立ち会ってもらった税理士に修正申告の作成まで依頼するのが一般的です。
修正申告を作成するとなると、日々の顧問料や調査の事前準備料、立ち会い料とは別に修正申告の作成費用が発生します。
詳しくは税務調査の流れと税理士の立ち会いに伴う税理士報酬とは?をご覧ください。

税務調査では、調査の対象期間が複数年度にわたるケースが一般的なため、修正が必要な年度から現在まで、全期間のやり直しが発生するケースもあります。
修正の量や内容の複雑さによって税理士の作業量が変わるため、修正申告の税理士報酬の相場は5〜20万円と幅広いのです。

税務調査で発生するペナルティとは?

税務調査で発生するペナルティには「追徴課税」があります。
追徴課税とは「不足していた税金を追加で納める行為」で、税務調査での指摘内容によっては、ペナルティが高い税率で加算されるケースもあります。

今回の章では、追徴課税の種類や対象期間、注意点について以下の7項目で解説します。

  • 延滞税
  • 過少申告加算税
  • 無申告加算税
  • 不納付加算税
  • 重加算税
  • 追徴課税の対象期間
  • 追徴課税の注意点

延滞税

延滞税とは「納付期限までに必要な税金を納めていなかったために発生する税金」です。
税務調査でミスが発覚した際にも、本来納めるべき税額を納付日までに納めていないため、延滞税が発生します。

延滞税の計算方法は以下のとおりです。

なお延滞税の税率は納付が終わるまでの期間によって異なり、詳細は以下のとおりです。

納付期限の翌日から2ヶ月以内 「7.3%」あるいは「延滞税特例基準割合+1%」のいずれか低い方
納付期限の翌日から2ヶ月を超える 「14.6%」あるいは「延滞税特例基準割合+7.3%」のいずれか低い方

参照:国税庁,№9205 延滞税について
参照:国税庁,延滞税の計算方法

また延滞税と似た性質の税金に「利子税」があります。
利子税は、申告や納税が期日までに完了できない場合に、税務署に届出をして期日の延長を承認してもらった際に発生する税金です。
利子税は期日を守った納税者との公平性を保つために存在しますが、延滞税よりも税率が低いため、期日が守れない場合には届出をすると追徴課税を安く抑えられます。

過少申告加算税

過少申告加算税とは「期日内に提出した申告書に誤りがあり、正しい税額よりも納付額が少なかったため加算される税金」です。
過少申告加算税の税率は納付金額によって異なり、詳細は以下のとおりです。

追加の納税について、期限内に申告した税額、あるいは50万円のどちらか多い方を超えない部分 10%
追加の納税について、期限内に申告した税額、あるいは50万円のどちらか多い方を超える部分 15%

無申告加算税

無申告加算税とは「期日までに申告を行わなかったために加算される税金」です。
無申告加算税の税率は納付金額によって異なり、詳細は以下のとおりです。

納付すべき税額の50万円以下の部分 15%
納付すべき税額の50万円を超えた部分から300万円以下の部分 20%
納付すべき税額の300万円を超えた部分
(令和6年1月1日以後に法定期日が到来するもの)
30%

不納付加算税

不納付加算税とは「給与や賞与から源泉徴収して預かった所得税を、期日までに納付しなかったために加算される税金」です。

不納付加算税は期日や金額で税率は変動せず、源泉徴収した納付すべき所得税に対して、一律10%が加算されます。

重加算税

重加算税とは「売上の隠ぺいや架空経費の計上などにより、故意に税額を安く抑えようとしたことが発覚した際に加算される税金」です。
重加算税が課されるケースでは、過少申告加算税・無申告加算税・不納付加算税の加算はなくなります。
しかし、重加算税は悪質な納税逃れに対して課されるため、加算税の中でも最も高い税率が設定されています。

重加算税の税率は、もともと課されるはずだった加算税の種類によって異なり、詳細は以下のとおりです。

本来は「過少申告加算税」が課されるケース 35%
本来は「無申告加算税」が課されるケース 40%
本来は「不納付加算税」が課されるケース 35%

なお過去に無申告加算税や重加算税が課されていたケースでは、上記よりも高い税率で重加算税が課せられます。

参照:財務省,加算税の概要

 追徴課税の対象期間

追徴課税の対象期間は原則3年です。しかし、対象期間が5〜7年となるケースもあります。

税務調査での追徴課税は、調査される年数に対応しています。
つまり同じミスが何年も継続しているケースや、過去に重加算税を課されているケースでは、調査・追徴課税の対象期間ともに3年を超えて、5〜7年にも及ぶ可能性があるのです。

追徴課税の注意点

追徴課税の注意点は以下の4つです。

  • 一括納付が原則
  • 早急に納付する
  • 損金算入できない
  • 財産差し押さえの可能性がある

追徴課税の注意点の1つ目は「一括納付が原則」です。
追徴課税の納付は、原則的に一括納付をしなくてはなりません。
追徴課税を課されている状態というのは、期日までに納めるべき税金をまだ支払っていない状態であり、早急な対応が求められるからです。

もし一括納付が難しいようであれば、税務署に申請をすると納付の猶予を認められるケースがあります。
しかし猶予が認められるのは原則で1年、最長でも2年であり、猶予期間中も延滞税が発生します。
総額で見ると、猶予を行ったケースの方が税額が高くなるため、どうしても納付が難しいケース以外では原則どおりに一括納付をしましょう。

2つ目の注意点は「早急に納付する」です。
追徴課税は、可能な限り早く納付しましょう。
長期間にわたり追徴課税を怠ると、税務署から督促状が届きます。
また督促状をも無視していると、最悪の場合、財産の差し押さえにまで発展する可能性があります。

3つ目の注意点は「損金算入できない」です。
追徴課税で支払った税金は、損金算入できません。
通常、税金を支払った際には二重課税を防ぐ観点から損金算入が認められています。
しかし追徴課税は、申告漏れや無申告に対するペナルティの意味があるため、結果的に税金を安くしてしまう損金算入はできないように定められています。
なお、届出にて申告と納税の期日延長を承認してもらった際に発生する「利子税」は損金算入が可能です。

4つ目の注意点は「財産差し押さえの可能性がある」です。
追徴課税の納付を怠り、税務署からの督促状も無視・放置していると、財産の差し押さえを実行される可能性があります。

追徴課税の支払いでは、金融機関からの借り入れを頼れない可能性が極めて高いです。
無申告や重加算税を課されたケースでは、融資に必要な申告書や納税証明書がないため、融資申請ができません。
また申告義務を怠ったり、悪質な納税逃れを行ったりしたとして金融機関からの信頼も得られないでしょう。
さらに追徴課税は自己破産しても免責されないと法律で決まっているため、自己破産手続きをしても納税の義務からは逃れられません。

財産の差し押さえを防ぐためにも、追徴課税は早急に納付し、もし納付が難しいようであれば税理士や税務署に早めに相談しましょう。

追徴課税を安く抑える方法

追徴課税は、申告漏れや無申告に対するペナルティの意味があるため高い税率が設定されていますが、申告や納付のタイミングによっては税率を低くできます。

加算される税金の種類によって対応が異なるため、詳細は以下を確認してください。

延滞税 延滞日数が延びるほど税額が増えるため、可能な限り早く納付する
過少申告加算税 税務調査で指摘を受ける前にミスに気がつき、自主的に修正申告を行った際には加算されないケースもある
無申告加算税
  • 過去5年間に無申告加算税または重加算税を課されておらず、申告期限から1ヶ月以内に自主的に申告と全額の納付を行った際には加算されない
  • 税務署から指摘を受ける前に、自主的に申告と納付を行った際は税率が5%になる
不納付加算税 税務署から指摘を受ける前に、自主的に申告と納付を行った際は税率が5%になる

追徴課税を払えないときの対処法

追徴課税を払えないときの対処法は「納税の猶予」あるいは「換価の猶予」の申請を行う方法があります。

「納税の猶予」は災害・病気・廃業などの理由で納税が困難である場合に、「換価の猶予」は一定の条件を満たすことで税務署からの承認を得られます。

それぞれの猶予制度が承認されると、納税の猶予あるいは分割での納税を認められます。
また、延滞税の免除あるいは軽減が可能なケースがあるほか、すでに差し押さえられた財産の売却(換価)や新たな財産の差し押さえを待ってもらえるのです。
なお原則として猶予を与えられるのは1年間であり、最長でも2年間までしか延長できないほか、猶予制度が承認されても追徴課税の納税義務がなくなるわけではありません。

追徴課税は可能な限り早く完納するのが望ましいですが、どうしても納付が難しいようであれば、早めに税理士や税務署に猶予制度の相談をしてみましょう。

参照:国税庁,納税に関する総合案内

まとめ

今回のコラムでは、税務調査時に指摘を受けた際のペナルティ(追徴課税)や関連費用、ペナルティを安く抑える方法、ペナルティを払えないときの対処法などを解説しました。
これまでの内容をまとめると以下のとおりです。

  • 修正申告の税理士報酬の相場は5~20万円
  • 税務調査の追徴課税は5種類ある
  • 追徴課税の対象期間は3~7年
  • 追徴課税の注意点は4つ
  • 追徴課税を安く抑えるためには早く申告・納付する
  • 追徴課税を払えないときには猶予制度がある

税務調査で申告是認(申告に間違いがない)と認められるケースは少なく、ほとんどのケースで修正申告の提出を求められます。
修正申告が必要になると追徴課税が発生するため、税務調査があれば追徴課税の納付が必要だと言っても過言ではないでしょう。
しかし悪質な納税逃れに課される重加算税を除いて、税務調査の前に自主的に修正申告をすれば、追徴課税は加算されないか、税率が低くなります。税務調査の連絡がきて、高額な追徴課税を課されないか不安な方は、まずは税理士に相談をしてみてください。
税理士と一緒に過去の申告書類を確認し、ミスの修正を調査の前にすると、追徴課税は加算されないか、低い税率での加算になります。

まずは1度、あなたの税理士に過去の申告書類を見てもらい、不安な点について相談して、調査の前に少しでも心配な点を減らしておきましょう!