アルバイト採用時の注意点とは?高校生や外国人を雇用する際のポイントも紹介
- 税務情報
- 最終更新日:
アルバイトの採用時には遵守しなければならない法律があります。
アルバイトも労働者として法律で保護されているため、低すぎる賃金で雇用したり、契約にない仕事を任せたりしていると、法令違反となるケースもあるのです。
今回のコラムでは、アルバイト採用に関する注意点や高校生・外国人を雇用する際のポイントを解説します。
比較的簡単な作業を任せる観点から、正社員よりも低い賃金で雇用されることが多いアルバイトですが、アルバイトの労働条件を軽視していると、トラブルに発展する可能性もあります。
知らず知らずのうちに法令違反をしたり、後日、従業員とトラブルになったりしないよう、このコラムを読んで正しい採用手続きができるようになりましょう!
目次
アルバイトの採用に関する6つの注意点
アルバイトは「低い賃金で雇用できる」「すぐに解雇できる」というイメージが根強いですが、労働基準法では正社員もアルバイトも等しく「労働者」として扱われます。
つまり「アルバイトだから労働者に不利な条件で雇っても良い」という認識は誤りであり、採用時にきちんと労働条件を定めておかないと、後日、法令違反が発覚する可能性もあるのです。
今回の章では、法令違反やトラブルを防ぐために必要な、アルバイト採用に関する6つの注意点を紹介します。
- 最低賃金を守る
- アルバイトでも残業代が発生する
- アルバイトでも有給休暇を付与する
- 未成年者の労働条件を確認する
- 就業場所・就業内容の変更や解雇は同意なく行えない
- 期間満了の退職では退職届は受け取らない
最低賃金を守る
最低賃金とは「使用者が労働者に最低限支払わなくてはならない」賃金です。
最低賃金は各都道府県ごとに定められており、事業所のある都道府県の最低賃金が適用されます。
つまり本店と支店が異なる県にあるケースでは、支店は支店を構える県の最低賃金を適用しなければなりません。
なお、最低賃金の計算には交通費は含まれず、最低賃金は毎年10月に改定されます。
何年も給与を見直さないと、いつの間にか最低賃金を下回っていたという事態にもなりかねないので、給与の金額は毎年見直すようにしましょう。
アルバイトでも残業代が発生する
アルバイトでも、法定労働時間(1日8時間あるいは1週間で40時間)を超えて就業すると残業代が発生します。
また休日出勤・深夜労働についても正社員と同じく、割増賃金が発生します。
参照:e-GOV 法令検索,第三十七条(時間外、休日および深夜の割増賃金)
アルバイトでも有給休暇を付与する
アルバイトでも、半年以上の雇用になると有給休暇を付与しなければなりません。
なお付与される日数は、所定労働日数と勤続年数によって変わり、詳細は以下の表のとおりです。
また1年間に10日以上の有給休暇が付与されるケースでは、年間に5日以上の有給休暇取得義務があります。詳細については表下部のリンクを確認してください。
週所定労働日数 | 1年間の所定労働日数 | 勤続年数(単位:年) | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
0.5 | 1.5 | 2.5 | 3.5 | 4.5 | 5.5 | 6.5 | ||
5日 | 217日以上 | 10 | 11 | 12 | 14 | 16 | 18 | 20 |
4日 | 169日~216日 | 7 | 8 | 9 | 10 | 12 | 13 | 15 |
3日 | 121日~168日 | 5 | 6 | 6 | 8 | 9 | 10 | 11 |
2日 | 73日~120日 | 3 | 4 | 4 | 5 | 6 | 6 | 7 |
1日 | 48日~72日 | 1 | 2 | 2 | 2 | 3 | 3 | 3 |
参照:厚生労働省,年次有給休暇の付与日数は法律で決まっています
参照:厚生労働省,年5日の年次有給休暇の確実な取得
未成年者の労働条件を確認する
未成年者は労働基準法で保護されている範囲が広く、成年者と同じ条件での雇用はできません。
労働時間・休日・深夜業・危険有害業務の制限など、雇用に際しさまざまな制限があるため、未成年者を雇用する際には事前に労働基準法を確認しましょう。
参照:厚生労働省 都道府県労働局 労働基準監督署,高校生等を使用する事業主の皆さんへ~年少者にも労働基準法が適用されます!~
就業場所・就業内容の変更や解雇は同意なく行えない
アルバイトでも、労働条件通知書や雇用契約書に記載した内容を本人の同意なく変更はできません。
労働条件を変更する際には本人の同意を得たうえで変更し、トラブルを防ぐために、変更点を記載した書類の作成も行いましょう。
なお、やむを得ない事情があるケースを除き、アルバイトでも会社都合での解雇は簡単にはできません。
解雇について規定を定めておきたい場合は、雇用契約書や就業規則に解雇に関する事項を記載し、従業員に確認のうえ、同意のサインをもらっておきましょう。
期間満了の退職では退職届は受け取らない
有期雇用契約のアルバイトが雇用期間満了で退職する際には、退職届は受け取ってはいけません。
退職届を受け取ってしまうと自己都合退職扱いとなり、失業保険の給付に関して優遇措置が受けられなくなってしまうため、後日、トラブルに発展する可能性があります。
もし退職届を提出された際には、退職届を提出せずにいると、失業保険で優遇措置が受けられる可能性があることを説明してあげると親切でしょう。
参照:ハローワーク インターネットサービス,特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲の概要
高校生や外国人のアルバイト採用時のポイントは?
高校生や外国人を雇用する際には、通常のアルバイト採用時に必要な書類以外にも準備しなければならない書類があります。
特に年齢の詐称や就労資格の詐称があった場合には、雇用主にも罰則があるため、高校生や外国人を雇用する際は充分な注意が必要です。
今回の章では、高校生を雇用する際に必要な書類を2つ、外国人を雇用する際に必要な書類を3つ紹介します。
高校生をアルバイトで雇用するケース
- 住民票記載事項証明書あるいは戸籍証明書
- 保護者の同意書
高校生をアルバイトで雇用する際に必要な書類1つ目は「住民票記載事項証明書あるいは戸籍証明書」です。
未成年者を雇用する際には年齢の確認が必要なため、住民票記載事項証明書あるいは戸籍証明書を提出してもらう必要があります。
2つ目の書類は「保護者の同意書」です。
未成年者が法律行為を行う際には、法定代理人の同意が必要です。
そのため未成年者をアルバイトで雇用する際には、同意書に法定代理人(保護者)のサインをもらうように促してください。
外国人をアルバイトで雇用するケース
- 在留カード
- 資格外活動許可証
- 外国人雇用状況届出書
外国人をアルバイトで雇用する際に必要な書類1つ目は「在留カード」です。
在留カードでは、正規の手続きで滞在しているのか、どのような業務に従事できるのかなどが確認できるため、外国人をアルバイトで雇用する際には必ず確認しましょう。
2つ目の書類は「資格外活動許可証」です。
留学・文化活動・家族滞在などで日本に在留している外国人は、資格外活動許可証なしでの就労が認められていません。
資格外活動許可を持たず就労すると不法就労となり、不法就労させた雇用主にも罰則が適用されるため、資格外活動許可証は外国人をアルバイトで雇用する際には必ず確認しましょう。
3つ目の書類は「外国人雇用状況届出書」です。
外国人を雇用あるいは外国人が離職した際には、外国人雇用状況届出書の提出が必要です。
ただし雇用する外国人アルバイトが雇用保険の対象者であれば、雇用保険被保険者資格取得届あるいは喪失届の提出が、外国人雇用状況届出書の代わりとなります。
つまり、外国人アルバイトが雇用保険の対象者の場合は、通常の雇用保険手続きのみを行い、雇用保険の対象外の場合は、外国人雇用状況届出書の提出が必要です。
まとめ
今回のコラムでは、アルバイト採用に関する注意点や高校生・外国人を雇用する際のポイントを解説しました。
これまでの内容をまとめると以下のとおりです。
- アルバイトの採用でも最低賃金を守る
- アルバイトでも残業代が発生する
- アルバイトでも有給休暇を付与する
- 高校生の雇用時には年齢確認や保護者の同意書が必要
- 外国人の雇用時には在留カードや資格外活動許可証の確認が必要
事業が安定してくると、事業拡大を目指してアルバイト採用を視野に入れる人もいるでしょう。
しかし、雇用に関する法律は毎年のように改定されるため、経営をしながら最新の情報にアンテナを張り続けるのは、かえってあなたの負担になる可能性もあります。
そのため、アルバイトの採用手続きをスムーズかつ法令違反やトラブルに発展しないように進めたい方は、労務管理の専門家「社会保険労務士」に相談をしてみましょう!
特に初めて従業員を雇う際には、手続きの量が増加するため、専門家に依頼するのがおすすめです。
また士業事務所は連携をとっているケースも多く、あなたの税理士に相談すれば、信頼のおける社会保険労務士を紹介してくれる可能性があります。
まずは1度、あなたの税理士に社会保険労務士と交流がないか尋ねてみましょう!