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政策金融公庫の融資額の基準とは?

これから事業を始めるときに、もっとも頭を悩ませるのが「融資」の問題。
「いくら借りられるのか」「融資額を決める基準は?」「自己資金はいくら必要なの?」と疑問は尽きませんよね。

今回のコラムでは、日本政策金融公庫の創業融資について、融資額の算出方法や審査を成功させるコツなどについて解説します。
このコラムを読んで創業融資について理解を深め、あなたの融資を成功させましょう!

このコラムに出てくるキーワードの解説

日本政策金融公庫 創業融資を受ける中でもっとも代表的な金融機関で国が株式の100%を保有しており民間と国営の中間のような機関。
融資額 融資を受けられる金額
自己資金 事業に関して自分で用意できる資金

政策金融公庫の融資の上限額はいくら?

日本政策金融公庫には複数の融資制度があります。
融資の上限金額は、どの融資を選ぶか、担保を準備できるかなどによって異なるため、まずはあなたがどの融資制度を利用するのか検討しましょう。

【日本政策金融公庫の融資一例】

新創業融資制度【無担保・無保証】 3,000万円(うち運転資金1,500万円)
新規開業資金 7,200万円(うち運転資金4,800万円)
新規開業資金(女性、若者/シニア起業家支援関連) 7,200万円(うち運転資金4,800万円)
新規開業資金(再挑戦支援関連) 7,200万円(うち運転資金4,800万円)
新規開業資金(中小企業経営力強化関連) 7,200万円(うち運転資金4,800万円)

参照:日本政策金融公庫,融資制度を探す 国民生活事業

上記の表は、日本政策金融公庫の創業に関する融資の一例です。
表を見ると、創業、つまり会社の実績がまだない状態でも1,000万円超の金額を借りられることがわかります。
しかし、実際には満額を借りられるケースはほとんどありません。

融資は審査結果によって融資額が決まるため、希望している金額が借りられるとは限りません。
他の金融機関からの借り入れや、事業に関係ない借り入れ(住宅・車のローンなど)も審査に影響するため、想定よりも融資額が少なくなるケースもあります。

つまり、あなたがいくら融資を受けられるのかは、融資の種類や審査結果で変わってくるのです。

創業融資額の平均はいくら?

日本政策金融公庫総合研究所の調査によると、2023年度の創業者の借り入れは「平均768万円」でした。
※この調査の「金融機関等からの借り入れ」には、日本政策金融公庫、民間金融機関、地方治体(制度融資)、公庫・地方自治体以外の公的機関が含まれます。
参照:日本政策金融公庫 総合研究所,「2023年度開業実態調査」~アンケート結果の概要~

同調査によれば創業者の借り入れは、2022年は平均882万円、2021年は平均803万円で、例年、800万円程度だとわかります。
しかし、あくまでこの調査結果は平均ですので、1,000万円を超える借り入れもいれば、100万円程度の借り入れもいるでしょう。

1つ前の章でも簡単に触れましたが、融資は希望している金額が借りられるとは限りません。
前章で紹介した中でもっとも条件の簡単な「新創業融資制度」は、運転資金のみ借りるのであれば1,500万円が上限です。
しかし、実際の創業者融資の平均額は、上限額の半分程度の800万円となっています。

なぜ、融資の上限額と実際の平均額に大きな差があるのでしょうか?

それは、高額な融資では、政策金融公庫の本店の審査も受けなければいけないからです。
政策金融公庫の支店のみで審査できる融資額は、おおよそ1,000万円程度と言われています。
つまり、1,000万円を超えるような融資を受ける場合、支店・本店両方の審査を通過しなければならず、審査のハードルが上がってしまいます。
そのため1,000万円を超える融資が実施されるケースは少なく、結果的に融資の上限額と平均額に大きな差が生まれているのです。

そもそもいくら借りればいいの?本当に借りるべき融資額

「融資は受けたいけれど、そもそも自分がいくら借りればいいのかわからない・・・」とお悩みの方はいませんか?

そのお悩みは「創業計画書」を作成すれば解決します!
あなたが始めようとしている事業に対し、希望する融資額が多すぎれば、当然、希望額に届く融資は受けられません。
過度な融資を受けようとして失敗しないためにも、創業計画書をしっかりと作成して適正な融資額を確認しましょう。「創業計画書」は政策金融公庫の創業融資を受ける際に、必ず提出しなければならない書類です。
創業計画書はこちらからダウンロードできます。
上記の創業計画書には9つ項目があり、融資額の算出には「⑦必要な資金と調達方法」が役立ちます。

まず、右側の枠に事業に必要な資金を記入します。
なお、設備資金と運転資金の例は以下のとおりです。

設備資金 土地・建物・車両・機械・パソコン・机・椅子・ホームページ設置費用 など
運転資金 給与・交通費・家賃・水道光熱費・修繕費・仕入・外注費・消耗品・
荷造運賃・広告費・通信費・交際費・会議費・税金・借入金の返済 など

次に左側の枠に資金調達の方法を記入します。
なお、右側と左側それぞれの合計は、必ず一致するように書かなくてはなりません。
たとえば、必要な資金が1,000万円となり、自己資金が300万円、他の金融機関や親族から借り入れがないケースでは以下のとおりになります。

必要な資金1,000万円 – 自己資金300万円 = 希望融資額700万円

上記の計算結果から、事業を行うために必要なお金は1,000万円で、手元には300万円あるため、融資で借りるべき金額は700万円だとわかります。

なお、計算した結果、希望融資額が1,000万円を超えるような場合は、前章で紹介した支店で扱える融資額を超えてしまうため、全額を借りるのは難しいと言えるでしょう。
そのような際には、必要経費を見直して削減できるところを探したり、融資の時期を延ばして自己資金を増やしたりしましょう。

融資成功のカギを握る!自己資金はいくら必要?

融資を成功させるために必要な自己資金は「希望融資額の3分の1」程度と言われています。
日本政策金融公庫総合研究所の調査によると、2023年度創業者の金融機関等からの借り入れは平均768万円、自己資金は280万円のため、借り入れ額が自己資金の約2.7倍だとわかります。
同様に2022年は約3.3倍、2021年は約2.8倍のため、例年、自己資金に対し融資額がおおよそ3倍程度となっています。
政策金融公庫の新創業融資制度には「創業資金総額の10分の1以上の自己資金を確認できる」という要件があります。
しかし、この要件は融資を申請するための要件であり、「自己資金が創業資金総額の10分の1以上あれば融資が受けられる」と確約するものではありませんので注意してください。
なお、自己資金と認められるもの・認められないものは以下のとおりです。

自己資金と認められるもの 現金・預金・資本金・退職金・資産を売却した資金 など
自己資金と認められないもの タンス預金(お金の出どころが不明のため)・
返済義務のあるお金(親族からの借り入れやクレジットカードのローンなど) など

驚くことに、タンス預金は実際にはお金があるにも関わらず、自己資金として認められません。
しかし、タンス預金は金融機関へ入金すると「預金」となり、簡単に自己資金にできます。
なお、融資審査に通りたいがために、一時的に知人からお金を借りて預金残高を増やす「見せ金」と呼ばれる行為がありますが、この行為は絶対にしてはいけません。
審査の際には、通帳を半年程度さかのぼって確認するためすぐにバレてしまいますし、「見せ金」は詐欺罪に該当します。
確実に融資を受けるためには、自分の力で希望融資額の3分の1程度の資金を蓄えておくのが重要です。

融資成功率UPを目指せ!政策金融公庫の審査方法とは?

融資の審査では複数のポイントをチェックされます。
今回の章では、創業融資の審査でチェックされるポイント5つと融資の成功率をあげるコツについて紹介します。

自己資金割合

まず融資のチェックポイント1つ目は「自己資金割合」です。
前章で詳しく紹介しましたが、自己資金は希望融資額の3分の1程度保有している状態が望ましいでしょう。
また、融資審査の直前に多額の入金があると「見せ金」だと判断される可能性がありますので、手元資金は早めに預金に移しておきましょう。

資金用途を説明できる

融資のチェックポイント2つ目は「資金用途を説明できる」です。
融資を受けた後、そのお金を、何に・いくら使うのか説明できるようにしておきましょう。
資金用途の説明ができないと、どうやって融資額を決めたのか不明瞭になり、希望融資額に根拠がないと思われてしまいます。
そのため可能であれば、設備投資や仕入の見積書、事業所の家賃が掲載されている書類など、誰に対して・何に・いくら使うのかわかる客観的な書類を準備しましょう。

返済見込みがあるか

融資のチェックポイント3つ目は「返済見込みがあるか」です。
お金を貸したわけですから、きちんと返済されるのかが政策金融公庫の1番の懸念ポイントです。
過去に税金や公共料金の滞納がないか、ローンは滞りなく返済されているか、金融機関やクレジットカード会社からの借り入れを多用していないかなど、返済に関連する内容は厳しくチェックされます。
もし、他の金融機関やクレジットカード会社などから借り入れをしていた場合は、少しでも返済して、残債を減らしたタイミングで融資を申し込みましょう。

事業経験があるか

融資のチェックポイント4つ目は「事業経験があるか」です。
たとえば、スポーツジムを経営しようとしている人が、これまで事務職の経験しかなければ、本当に事業が成功するのか疑問に思われるのは当然ですよね。
事業の成功は、返済に大きく関わる問題ですので、あなたが始めようとしている事業に対して、有用な経験や資格があるのかも審査の判断基準になります。

面談に対応できる

最後に融資のチェックポイント5つ目は「面談に対応できる」です。
政策金融公庫の融資は必ず面談審査があります。
いくら書類がしっかり作りこまれていたとしても、書類に書いてある内容をあなた自身が説明できなければ、信頼を得るのは難しいでしょう。
融資に関して提出・提示した書類についてきちんと説明できるようにしておくほか、業種によっては事業所や工場に訪問されるケースがありますので、設備についても説明できるようにしましょう。

まとめ

今回のコラムでは、あなたが借りるべき融資額の算出方法や審査を成功させるコツなどについて紹介しました。
これまでの内容をまとめると以下のとおりです。

  • 創業融資の平均額は約800万円
  • 融資額算出のために創業計画書を作成する
  • 自己資金は希望融資額の3分の1以上必要
  • 審査のポイントは自己資金・資金用途・返済見込み・事業経験・面談

政策金融公庫の創業融資を受けるうえでもっとも重要な手続きは、創業計画書をしっかりと作りこむことです。
創業計画書は自分でも作成できますが、経費のどこまでが事業用なのか、どの経費にいくらかかるのかなどの判断は慣れないと難しいでしょう。
融資の経験豊富な税理士は創業計画書の作成に慣れているのはもちろん、あなたの事業にかかる費用の相場や事業所の立地などを考慮した経費計算をしてくれます。
さらに、認定支援機関に認定された税理士に依頼すれば、融資の選択肢が増え、当初考えていた制度よりも、融資の上限額が増加したり、金利が下がる可能性もあるのです。
手続きに報酬はかかりますが、書類を作成するのに自信がない、ミスなくスムーズに融資を進めたいと考えるのであれば、ぜひ1度、融資の相談可能な税理士を探してみてください。