法人設立、株式会社と合同会社どっちがいい?
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2006年の会社法改正により、日本に新しい会社形態として「合同会社」が創設されました。それ以前は「株式会社」「合名会社」「合資会社」の3種類のみでしたが、改正後は合同会社を含めて4つの会社形態から選べるようになっています。現在、日本で設立可能な会社形態は以下のとおりです。
株式会社 | 最も一般的な会社形態で社会的認知度が高い |
---|---|
合同会社 | 設立のコストが低く、早く設立できる、運営の自由度が高い |
合名会社 | 出資者全員が無限責任を負う(無限責任社員のみで構成される)。個人事業主に近い属性を持つ。認知度がとても低い |
合資会社 | 無限責任社員、有限責任社員それぞれ最低1名からなる会社形態。認知度がとても低い |
起業する際の多くは株式会社、合同会社を選択すると思います。
今回は株式会社と合同会社、どちらを選べばいいかを解説します。
合同会社の特徴とは
2006年の会社法改正によって日本で新たに導入された会社形態です。アメリカではとても一般的な形態であり、実際にGoogleやAmazonといった世界的企業も合同会社の仕組みを採用しています。
合同会社は、株式会社と比べて柔軟性が高く、少人数での経営やスピードを重視するビジネスに適している点が大きな特徴です。
合同会社設立のメリット
①設立費用が安い
株式会社の設立には定款認証費用などで20万円以上かかるのに対し、合同会社は定款認証が不要なため設立費用を大幅に抑えられます。10万円程度から設立できるため、資金を節約しつつ事業をスタートできるのは大きな魅力です。
②意思決定が早い
合同会社は、経営に関わる意思決定を出資者間の合意で柔軟に行えるため、株式会社のように株主総会や取締役会を開く必要がありません。事業の拡大や方向性の変更などでは迅速な意思決定が可能となり、スピード感を重視するビジネスに向いています。
③事務手続きが楽
合同会社は、株式会社に比べて運営に必要な事務手続きが少なく、決算公告の義務もありません。創業時は特に忙しくなりがちですが、事業運営に集中できる環境も必要になるため、とてもバランスの取れた会社形態と言えます。
④個人資産の保護
合同会社は「有限責任」であり、出資者は出資額を上限に責任を負います。つまり、万が一事業に失敗しても個人資産までリスクが及ぶことは基本的にありません。起業家にとって安心して挑戦できる制度といえます。
合同会社が向いている会社の特徴
スタートアップ起業
低コストで、株式会社に比べると会社の設立も早く、さらに株式会社のように株主総会や取締役会を開く必要がないため活発な施策を試す創業初期では特にメリットとなります。
コンサルティング
コンサルティング業は少人数で運営されるケースが多く、合同会社であれば社員全員が経営に参画できるため、クライアントの課題解決に向けて柔軟で強固な体制を築きやすいのが特徴です。そのため、合同会社はコンサルティング業との相性が良いといえます。
飲食業
低コストで設立できる合同会社は、資金をできるだけ店舗の運営や設備投資に回したい飲食業にもメリットがあります。
また、表向きの活動は屋号で行うことが多く、株式会社と比べると認知度の低い合同会社でも問題ないと考える起業家も多いです。
IT企業
スピード感のある事業展開が求められるIT分野では、迅速な意思決定と少人数での効率的な運営が可能な合同会社が相性良く機能します。
デザイン・クリエイティブ
柔軟な組織運営と自由度の高さから、チームでアイデアを出しながら成長していくデザイン・クリエイティブ業には適しています。
株式会社の特徴とは
株式会社は、日本において最も歴史のある会社形態です。株式を発行することで広く資金調達が可能であり、株主と経営者を分離した仕組みによって経営が行われます。規模の大小を問わず設立できますが、信頼性や社会的な信用度が高い点が大きな特徴で、上場企業をはじめ、多くの中小企業も株式会社の会社形態をとっています。
株式会社のメリット
①知名度が高い
最近では合同会社も増えてきましたが、未だに『合同会社って?』という人も見られます。
そういった意味で言うと採用、契約の観点からは株式会社の認知度が優位に働くことがあると言えます。
②融資が受けやすい?
世間では株式会社は信用が高いなどと言われ、融資が受けやすいと考える人も多いようですが、基本的に信用は関係ありません。銀行の融資の審査に際して、合同会社よりも昔からある株式会社の方が多いため審査に慣れているだけです。
実際に、銀行での融資を受ける場合に合同会社でも株式会社でも融資は通ります。
ただ、合同会社の規模が比較的小さいこともあり、融資額が自然と低くなりやすいためお金を貸す側のメリットは少ないと考える可能性はあります。
③資金調達の幅が広い
株式の発行によって、多くの投資家から資金を集めることが可能なため大規模な事業拡大を目指す場合は適した会社形態と言えます。
株式会社に向いている会社の特徴
社会的信用や採用活動に重きを置く
合同会社の知名度は近年高くなりましたが株式会社に比べるとまだまだです。
社会的信用や採用活動の強化を考えるのであれば株式会社が適しているでしょう。
上場を視野に入れている
将来的に株式を公開して投資家から資金を得たいと考えている場合は株式会社の会社形態が適しています。
組織的な経営を重視する場合
多くの従業員を抱え、取締役会や監査役を設けて意思決定を慎重に行える株式会社の会社形態が適しています。
合同会社と株式会社を比較してみる
合同会社 | 株式会社 | |
---|---|---|
設立費用 | 約6万円 | 約20万円 |
社会的認知度 | 低い | 高い |
上場 | できない (株式会社へ組織変更が必要) |
できる |
会社の代表者 | 業務執行社員(代表社員) | 代表取締役 |
決算公告 | 不要 | 必要 |
監査役人数 | 不要 | 1人以上 |
定款の認証 | 不要 | 必要 |
定款の変更方法 | 全社員の同意 | 株主総会で3分の2以上の同意 |
具体的にどのように考えて設立すればいい?
合同会社を選ぶ理由
以下のようなものに当てはまる場合は合同会社でもいいかもしれません。
個人事業主での実績があり、キャリアがある
個人事業主から法人成りする場合はすでに顧客がいると言うことも多いかと思います。また、実績やキャリアもユーザーにアプローチできるのであれば『株式会社』と言うネームバリューが必要になるケースは少ないでしょう。そうなると安くて、早く設立できる合同会社の方が適しているかもしれません。
お店などで屋号を使って事業展開する
小売店や飲食店などではお店の名前(屋号)で営業活動をすることになるため会社形態である株式会社や合同会社と言う名前を表で使用する必要がありません。特に飲食店になってくると初期投資が大きいこともあり、手元にできるだけ多くのお金を残しておきたいと考える方も多いため、安く設立できる合同会社が適しています。
少数精鋭のコンサル、クリエイティブチーム
コンサル、クリエイティブ系の事業では少人数で迅速な意思決定ができる合同会社がおすすめです。株主総会が不要で、社員間での合意によって重要事項を決定できます。社員数を広く募ったり、大企業を目指さない場合は合同会社でも十分と言えます。また、後に事業拡大、方向転換で上場を目指す場合は、組織変更で株式会社にすればいいだけなので、その辺りの柔軟性もコンサルやクリエイティブ業には向いていると言えます。
株式会社を選ぶ理由
以下のようなものに当てはまる場合は株式会社を選ぶといいかもしれません。
大企業や上場を目指す
合同会社は株式の発行ができないため、上場を目指す企業には適していません。将来的に株式公開を視野に入れるのであれば、株式会社を選択するのが必然です。さらに、事業規模が拡大して大企業となると、取締役会や監査役といったガバナンス体制の整備が求められるため、組織的な経営に適した株式会社が望ましいといえます。
社会的信用を得たい場合
「株式会社」という名称は長い歴史があり、社会的な認知度が高いため、取引先との契約において有利に働くケースがあります。合同会社の設立件数は年々増加しているものの、依然として知名度では株式会社に劣ります。そのため、採用活動の場でも「株式会社」とすることで、合同会社に馴染みのない求職者に対して安心感を与え、応募のハードルを下げることができます。
まとめ
株式会社と合同会社は、どちらも法人としての基盤を持ちつつ、それぞれ異なる強みを持っています。対外的な信用や資金調達を重視するなら株式会社が適しており、設立・維持コストを抑えて柔軟に経営したい場合には合同会社が有力な選択肢です。法人設立は事業のスタートラインであり、最適な形態を選ぶことが重要です。