2024年、M&Aが減税に!中小企業の合併・買収による控除を解説
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もっと会社を成長させたい、M&Aをやってみようかと考えているあなたに朗報です!
2024年からM&Aに関する税制が改正され、今よりも制度を利用しやすくなり、かつ、大きく税の優遇を受けられるようになります。
今回は、2024年より施行されるM&Aに関する税制改正についてわかりやすく解説します!
税制改正について知識を身につけ、M&Aの計画、つまりあなたの会社を成長させる計画を一歩前進させましょう!
目次
このコラムに出てくるキーワードの解説
M&A | 合併あるいは買収により事業の一部あるいは全部を他の企業に移転させること |
---|---|
中小企業事業再編投資損失準備金 | M&Aの株式取得価額を損金参入できる制度 |
損金算入 | 会計では費用とならないものを税法で損金にすること |
益金算入 | 会計では収益とならないものを税法で益金にすること |
2024年改正、中小企業事業再編投資損失準備金とは?
中小企業事業再編投資損失準備金とは「M&Aの株式取得価額を損金参入できる」制度です。
この制度を利用すれば、株式取得価額が10億円以下のM&Aは、取得価額の70%まで損金に算入できます。
ただし、5年の据え置き期間ののち、5年かけて損金算入した準備金を益金算入するので、税金を減らすのではなく、納税のタイミングを遅くする制度だと理解しておきましょう。
参照:中小企業庁財務課,中小企業の経営資源の集約化に資する税制 概要・手引き
なお、中小企業事業再編投資損失準備金は、経営資源集約化税制の施策の1つです。
経営資源集約化税制とは、M&Aで生産性向上を目指す中小企業を税制面で優遇する制度です。
準備金制度のほかには、設備投資額の10%あるいは7%を税額控除できる制度(中小企業経営強化税制)と、給与支給増加額の25%あるいは15%を税額控除できる制度(所得拡大促進税制)があります。
ただし、上記3つの施策はいずれも、経営力向上計画の認定を受けた中小企業のみ利用できる点に注意してください。
2024年の改正点を解説
2023年12月に通達された税制改正案では、中小企業事業再編投資損失準備金について、以下のような改正が発表されました。
- 制度を利用できる企業が拡大
- 税制優遇を利用できるM&Aの要件が緩和
- 損金算入が最大100%まで可能
- 納税までの期間が延長される
参照:経済産業省,令和6年度(2024年度)経済産業関係 税制改正について
参照:財務省,令和6年度税制改正の大綱
今回の改正で、現行法が大幅リニューアルされ、制度が使いやすくなるために2024年以降のM&Aの加速に注目が集まっています。
今回の章では、改正の中でも特に大きく変更となった4つの項目についてそれぞれ解説します。
制度を利用できる企業が拡大
まず1つ目の改正ポイントは「制度を利用できる企業が拡大する」です。
中小企業事業再編投資損失準備金は「中小企業のみ」が利用できる制度でした。
しかし、今回の改正案で中小企業に加え「従業員数が2000人以下の中堅企業」も準備金制度を利用できるよう規模が拡大されました。
税制優遇を利用できるM&Aの要件が緩和
2つ目の改正ポイントは「税制優遇を利用できるM&Aの要件が緩和する」です。
現行法では税制優遇を利用できるM&Aは、株式取得価額が10億円以下の取引に限られていました。
しかし、今回の改正で取得価額の要件が「1億円以上から100億円以下」に変わります。
また、現行法は当初の予定より期間が延長され、2027年3月まで適用できる見込みです。
そのため、改正後の「1億円以上」の要件を満たさずとも、現行法を利用しての税制優遇は受けられる可能性があります。
つまり、今まで優遇を受けられたM&Aに加え、今までは対象とならなかったM&Aも税制優遇を利用できるのです。
損金算入額が最大100%!全額損金が可能に!
3つ目の改正ポイントは「損金算入が最大100%まで可能になる」です。
現行法では、準備金として損金算入できるのは取得価額の70%まででした。
しかし税制改正後には、複数のM&Aを行う場合、初回は90%まで、2回目以降は100%まで損金算入が可能になります。
たとえば、株式取得価額が10億円(現行法の上限金額)のM&Aを実施したとします。
現在の制度では最大7億円の損金算入ができますが、改正後は初回は9億円、2回目以降は10億円まで損金算入が可能です。
また、税制優遇を利用できるM&Aの要件が緩和されたため、今までは損金をつくれなかったM&Aでも大きな損金をつくれます。
たとえば、株式取得価額が100億円(改正後の上限金額)のM&Aを実施したとします。
今までは1円も損金にできませんでしたが、改正後は初回のM&Aであれば90億円、2回目以降のM&Aであれば100億円まで損金にできるのです。
実際に数字にしてみると、全額損金が可能になる今回の改正が、どれほど大きなものかわかりますね。
納税までの期間が延長
4つ目の改正ポイントは「納税までの期間が延長される」です。
中小企業事業再編投資損失準備金は、5年の据え置き期間ののち、5年間かけて益金へと算入されます。
この「5年」の据え置き期間が、税制改正後には「10年」へ延長されるのです。
準備金が益金へと算入されれば、算入された分の税金が発生します。
準備金の金額が大きければ大きいほど、益金算入額も大きくなり、納税額にも影響してくるのです。
据え置き期間が5年から10年へ延長されれば、納税までの猶予が延びるため、より長期的な経営戦略を考えられます。
待ち構える多額の納税に対してもしっかりと準備ができるでしょう。
改正後の制度を利用するメリットとは?
税制改正後の制度を利用してM&Aを実施するメリットは「リスクを低減できるM&Aが増えること」です。
M&Aを実施するうえで最も大きなリスクは、簿外債務や偶発債務などにより思わぬ支出が生じる可能性があることです。
多額の支出が生じれば、せっかく時間をかけて考えた経営戦略もうまくいかず、最悪、M&Aを実施する前よりも経営状態が悪化してしまうかもしれません。
しかし、中小企業事業再編投資損失準備金の制度を利用すれば、一時的ではありますが損金算入できた分の税金が減り、突然の支出に対応できる資金を手元に残せます。
また、益金算入が5年かけて行われるため、納税額を分割できるのです。
ただ、現行の中小企業事業再編投資損失準備金の制度で最大効果を得るためには、2021年4月から2024年3月までに10億円以下のM&Aを実施する必要がありました。
M&Aは売り手も買い手も慎重になる取引のため、仮に10億円以下のM&Aの計画が複数あったとしても3年間ですべての取引を完了させるのは困難だったでしょう。
しかし、現行法の延長や施策の大幅改正により、時間的猶予や対象取引が拡大します。
そのため、今までよりもっと多くのM&Aがリスクを減らして取引できるようになるのです。
まとめ
今回は、2024年より施行されるM&Aに関する税制改正について、4つのポイントを解説しました。
現行法 | 改正後 | |
---|---|---|
対象企業 | 中小企業のみ | 中小企業・中堅企業 |
対象のM&A | 10億円以下まで | 1億円以上~100億円以下まで |
損金算入率 | 70%まで | ・初回:90%まで ・2回目以降:100%まで |
据え置き期間 | 5年 | 10年 |
2024年の改正により、中小企業事業再編投資損失準備金の制度は格段に利用しやすくなります。
なお、今回の改正内容は、2027年3月まで適用される見込みです。(2024年3月現在)
この機会に、会社をもっと成長させたいと考えている方は、M&Aによる事業拡大も検討してみましょう。
まずは、あなたの頼れるパートナーであり、税のプロである税理士にあなたの考えを相談してみてください!